浦和家庭裁判所秩父支部 平成元年(家)127号 審判 1990年6月15日
申立人 秩父市
代表者市長 内田全一
被相続人 甲野ハナ
主文
被相続人甲野ハナの相続財産を申立人秩父市に分与する。
理由
1 申立ての要旨
(1) 被相続人(昭和二年六月一三日生)は、昭和五七年二月一四日死亡して、相続が開始した。
(2) 被相続人には、法定の相続人が見当たらなかったので、相続財産管理人が選任され、同人の請求により相続人捜索の公告がなされたが、期間内にその権利を主張するものがいなかった。
(3) 申立人は、被相続人の生前、同人と特別の縁故関係があったから、相続財産の分与を求める。
2 当裁判所の判断
本件記録添付の各資料(昭和六三年(家)第二八号相続財産管理人選任申立事件及び同年(家)第一九八号相続人捜索の公告申立事件の各記録を含む。)並びに家庭裁判所調査官森本行子作成の調査報告書によると、申立ての要旨(1)、(2)の事実のほか、次の事実が認められる。
(1) 被相続人は、身寄りがなく、精神分裂病であったところ、昭和四七年七月二二日東京都内において警察に保護され、同月二四日申立人職員によって秩父中央病院に入院した。
(2) 被相続人は、同日以降同五七年二月一四日死亡するまでの間、同病院に入院し、この間の生活費及び医療費はすべて申立人の生活保護によってまかなわれ、その総額は一四〇〇万円を超える。
(3) 被相続人が死亡した際、葬祭を行う者がいなかったため、申立人職員が供養を行い、申立人が葬儀費用を負担した。
以上認定した事実によれば、申立人は民法九五八条の三第一項のいわゆる特別縁故者に該当するというべきである。
よって、本件記録に顕れた一切の事情を考慮し、相続財産管理人佐藤敦史の意見を聞いたうえ、被相続人の相続財産を申立人に対し分与するのを相当とみとめ、主文のとおり審判する。
(家事審判官 山野井勇作)
<以下省略>